皆さん、こんにちは。Dの意志です。
転職活動をしている方、こんなことを考えていませんか?
転職時に少しでも高いオファーが欲しいけど、どうやって交渉すればいいのだろう?
私も、1度目の転職まではそうでした。
ですが、2度目の転職(国内医療機器メーカー → 海外MBA → 外資系製薬企業)では給与交渉を行い、前職から約230万円アップ(1,300万円 → 1,530万円、+17.7%)のオファーを獲得することができました。
この記事では、結果を出すまでに私が実践した給与交渉の全体像と具体的なテクニックを、体験談を交えてお伝えします。
まず結論:給与交渉は「下準備」と「交渉テクニック」の2段階で決まる
給与交渉の成否は、オファー面談などの「その場」だけで決まるわけではありません。
私の経験上、交渉がうまくいくかどうかは、大きく2つのフェーズに分けて考えると整理しやすくなります。

フェーズ1|交渉前の下準備(転職活動の中盤まで)
- 転職エージェントだけに頼らず、直接応募も積極的に活用する
- 複数社(2〜3社)で同時並行に選考を進める
- 希望する職位の年収レンジを事前にリサーチする
フェーズ2|交渉時のテクニック(オファー受領後〜最終交渉)
- 「第一希望だが、給与だけが課題」と論点を絞って伝える
- 嘘はつかないが、具体的な情報は出しすぎない
- 指値(希望金額)を準備しておく
下準備が不十分だと、交渉の場で使えるカードがなくなります。
逆に、下準備ができていれば、交渉時のテクニックそのものは驚くほどシンプルです。
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
フェーズ1|交渉前の下準備
1. 直接応募も積極的に活用する
中途の転職となると、まずは転職エージェントを思い浮かべる人が多数だと思います。
ただ、自身は転職エージェントのビジネスモデルを踏まえ、積極的に直接応募も活用しました。
転職エージェントは、応募者ではなく、企業側から成功報酬を受け取るビジネスモデルです。
つまり、実質的な顧客は企業であり、エージェントには「できるだけ低コストで良い人材を企業に紹介する」ことへの強いインセンティブが働いています。
このため、応募者の希望と企業側の希望に齟齬が生じた場合、特に給与面では、エージェントは構造上、企業側の要求が通りやすいように動きます。
実際、エージェントを活用した周囲の友人からも、次のような声を聞きました。
最初から希望年収を伝え、再三確認してもらっていたが、最終的には希望年収を少し下回る形での給与となった。
スポーツ選手のように、自身でお金を払ってエージェントに依頼する形とは異なり、転職エージェントの多くは企業側からお金をもらっています。
交渉の主導権をエージェントに渡すことは、実質的に企業側に主導権を渡すことに近いと考えています。
その結果、自分の要求が通りにくくなるリスクがあることは、覚悟しておいた方がよいでしょう。
この構造を踏まえ、私は、できる限り企業に直接応募する形を取りました。
人事担当者と直接コミュニケーションを取ることで、自分の交渉カードや、伝えるタイミングを自分自身でコントロールできるように致しました。

ただ、転職エージェントの活用を否定しているわけではありません。
特定のポジションは、エージェント経由でなければ出会えないこともあります。
また、企業側とのやり取りを簡素化できるメリットもあります。
エージェントと直接応募、それぞれの特性を理解した上で、総合的に判断し、上手く活用していくのが良いかと思います。
2. 複数社(2〜3社)で同時並行に選考を進める
交渉の最大の武器は、「ここで決まらなくても、他に選択肢がある」という状態を作ることです。
私は最初から1社に絞らず、2〜3社に応募し、並行して選考を進めました。
例えば、応募先が1社のみだった場合を考えてみます。
仮に、そのオファーに納得がいかず、強く交渉したとしても、決裂すれば「内定ゼロ」のリスクを自分自身が背負うことになります。
企業側もこの構造を見抜いていれば、「無理に交渉してこないだろう」という前提で、強気な条件を出さなくても困らないわけです。
つまり、交渉の主導権は、実質的に企業側が握っている状態になります。
一方、2〜3社のオファーを並行して保持していれば、交渉が決裂しても「他社に進める」という退路が確保されます。
この状態であれば、最悪の場合でも無職になるリスクはなく、心理的にも余裕を持って交渉に臨めます。
さらに、複数社のオファーがあることで、「他社ではxx円の提示をいただいている」という具体的な比較材料を、交渉の場で使うことができます。
これは単なる強がりではありません。
企業側にとっても、「優秀な人材を他社に取られたくない」という競争意識を生む、実質的な情報になります。
実際、私自身も、最終的に複数社からオファーを保持できました。
その結果、「他社でより良い条件が出ている」という事実そのものを、交渉材料にすることができました。
1社だけのオファーであれば、この交渉材料自体が存在しなかったことになります。

3. 希望する職位の年収レンジを事前にリサーチする
闇雲に高い金額を要求すると、交渉先の企業も対応に困ります。
例えば、年収レンジの相場を知らないまま、実態とかけ離れた希望額を出してしまったとします。
すると、企業側から「市場を理解していない」「自身の市場価値を把握できていない」という印象を持たれかねません。
最悪の場合、それまで積み上げてきた選考評価そのものに、マイナスの影響が及ぶリスクもあります。
逆に、相場より低すぎる金額を提示してしまうと、本来取れたはずの条件を、自分から下げてしまうことにもなります。
私はOpenWorkなどを使い、応募する職位の年収レンジを事前に調査しました。
その上で、「どの程度交渉の余地があるか」を把握してから動きました。
また、レンジの中で、自分がどのポジションに当たるかも考えました。
具体的には、経験やスキル感から見て、レンジの上位に当たるのか、中間に当たるのかを把握しました。
その上で、レンジの上限に近く、かつ無理のない金額を、希望額として提示しています。
事前にリサーチをしておくと、提示する希望額が「その職位の相場として十分にあり得る金額」になります。
そのため、企業側も「検討の余地がある要求」として受け止めやすくなります。
逆に、リサーチなしで相場から外れた金額を出してしまうと、企業側にとっては、検討すら難しい「論外な要求」として扱われる可能性があります。
その結果、交渉のテーブルに乗る前に終わってしまうかもしれません。
事前に年収レンジを調べておくことで、現実離れしていない、説得力のある希望額を提示できるようになります。

フェーズ2|交渉時のテクニック
初回オファーを受けた後、人事担当者からフォローアップの電話や、フォローアップ面談などがあります。
実際、初回オファーから、さらなる給与アップができた際は、次のような流れでした。
- 初回オファーをメールで受け取る
- 人事担当者からフォローアップの電話を受ける
- 直属の上司となる予定の方と面談する
この場が、給与交渉の本番になります。
次の3つのテクニックは、まさに、この「フォローアップの電話・面談」の場で実践したものです。
4. 「第一希望だが、給与だけが課題」と論点を絞って伝える
給与以外の希望条件は、すべて満たされていることを伝えました。
その上で、論点を「給与のみ」に絞り込みました。
仮に、給与に加えて、職位や勤務形態、入社日なども同時に交渉のテーブルに乗せてしまうと、どうなるでしょうか。
企業側は、複数の論点を、それぞれ検討する必要があります。
給与は人事、職位は上長、勤務形態は別部署というように、論点ごとに異なる承認プロセスを経なければならないケースも出てきます。
検討先が増えるほど、社内調整に時間がかかり、回答も遅くなりがちです。
さらに、論点が多いこと自体が、「この人は本当にこのポジションに入りたいのだろうか」という、入社意欲への疑問につながるリスクもあります。
一方、論点を給与だけに絞ると、企業側からすれば、「給与さえクリアできれば、この人材を獲得できる」という状態になります。
つまり、ゴールが一つだけになります。
検討すべき論点が一つしかないため、給与の決裁権を持つ人、例えば人事や上長だけで判断できることが多くなります。
その結果、回答も早くなりやすいです。
具体的には、次のような伝え方をしています。
「希望のポジションとして御社が第一希望ですが、給与面で他社からxx円の提示をいただいており、迷っています」
このように、給与以外はすべて合意している前提を明確にします。
そうすることで、「入社意欲は高いが、唯一、給与だけがハードルになっている」という状況を、企業側にシンプルに伝えることができます。
論点をシンプルにすることで、企業側も対応しやすくなり、交渉がこじれにくくなります。

5. 嘘はつかないが、具体的な情報は出しすぎない
前回の転職活動では、現在の給与確認のために、源泉徴収票の提出を求められたことがあります。
そのため、現職の給与については盛らず、正確な金額を伝えるようにしています。
一方で、他に受けている企業については、社名までは明かしませんでした。
「メガファーマ業界」「メドテック業界」といった、業界レベルの情報にとどめました。
例えば、他社の社名を具体的に伝えてしまった場合を考えてみます。
社名が分かれば、相手企業は、その企業の給与レンジをある程度具体的に推測することができます。
口コミサイトのOpenWorkや、業界内のネットワークなどが、情報源になります。
仮に、「A社が1,500万円を提示している」と分かったとします。
すると、相手企業は、「1,510万円を出せば確実に競り勝てる」と判断できてしまいます。
その結果、ピンポイントかつ、最小限の上乗せで済ませることができます。
つまり、こちらから「いくら積めば獲得できるか」という、答え合わせのヒントを渡してしまうことになります。
一方、「メガファーマ業界で他社オファーがある」という、業界レベルの情報にとどめた場合はどうでしょうか。
相手企業は、競合の具体的な金額を特定できません。
その業界の年収レンジが1,400万〜1,700万円だとすれば、相手企業からは、「競合は1,400万円かもしれないし、1,700万円かもしれない」という状態になります。
つまり、的を絞れません。
確実に候補者を獲得したい場合、的を絞れないからこそ、安全マージンを取って、高めの金額を提示する判断につながりやすくなります。
例えば、1,650万円を提示するといった判断です。
実際、私は最後まで、受けている会社名は伝えませんでした。
業界レベルの情報に留めることで、最終的に、自身が伝えた希望アップ額より高い追加のオファーを頂くことができました。

6. 指値(希望金額)を準備しておく
フォローアップの電話や面談では、いつ「具体的にいくら欲しいのか」と聞かれてもおかしくありません。
仮に、指値を準備していなかった場合を考えてみます。
突然、「具体的にいくらをご希望ですか」と聞かれると、その場で考えることになります。
その結果、「もう少し上げていただけると嬉しいです」のような、曖昧な回答になりがちです。
企業側からすると、具体的な数字がなければ、「結局、どこまで対応すれば納得してもらえるのか」が分かりません。
そのため、検討の土台に乗せることができません。
結果として、検討自体が先延ばしになったり、企業側の判断で、想定より低い金額を提示されたりする可能性もあります。
さらに、即答できないこと自体が、「交渉の準備不足」「本気度の低さ」として伝わってしまうリスクもあります。
一方、指値を準備しておいた場合は、聞かれた瞬間に「+25万円」のような、具体的な数字を即答できます。
数字が明確であれば、企業側も、すぐに「その金額なら承認できるか」という社内検討に移ることができます。
結果的に、話が早く進みます。
また、事前に年収レンジを調べた上での現実的な数字であれば、「無理な要求ではない」と相手に伝わりやすくなります。
そのため、検討のテーブルにも乗りやすくなります。
私は、フェーズ1で調べた年収レンジを踏まえ、「いくらまでなら、現実的に交渉が通る可能性があるか」を事前に決めておきました。
曖昧な要望ではなく、具体的な指値を準備しておくことで、相手も検討しやすくなり、話がスムーズに進みます。
実際、直属の上司となる予定の方との面談で、「約25万円アップ」という具体的な希望額を即座に提示しました。
すると、後日、希望を上回る約50万円アップのオファーを頂くことができました。
事前に数字を決めていなければ、その場で曖昧な回答になってしまい、この交渉自体が成立しなかったかもしれません。

なぜ私は給与交渉に踏み切ったのか
ここまで、「下準備」と「テクニック」を紹介しました。
そもそも、私がここまで交渉にこだわった理由には、1度目の転職での経験があります。
- 転職時の年収はその後の基準になる:同じ職位・仕事内容でも、前職の給与が高い人ほど、オファー額も高くなることを実感しました。
- 入社後に給与を上げるのは難しい:高いパフォーマンスを出しても、昇給は、同じ職位内では小刻みになりがちです。
- 入社後の給与交渉は心象に影響する:上司への印象悪化や、新しいプロジェクト機会を逃すリスクがあります。
これらの学びから、「交渉できるのは転職のタイミングだけ」と考えました。
そして今回は、最初から戦略的に交渉に踏み切りました。
入社後に分かったことは、初回オファーは、同職位の中で平均以下だったということです。
一方、最終オファーは、平均以上でした。
企業側も、交渉が入ることを前提に、最初は少し低めの提示でバッファーを残していたのだと思います。
たとえ最初のオファーがブラフだとしても、一度交渉してみる価値は十分にあると感じています。
最後に
転職時の給与交渉は、単なる金額の話ではありません。
その後のキャリアの「スタートライン」を決める行動です。
今後、転職を考える方には、ぜひ「交渉する勇気」と「準備」の両方を持って臨んでいただければと思います。

