生成AIがライフサイエンス領域にもたらすインパクトは、すでに無視できない規模になっています。
- McKinsey:年間 600~1,100億ドル の経済価値
- Commercial領域だけでも 180~300億ドル
- BCG:Gen AI市場は CAGR85% で拡大し、2027年に 22億ドル規模へ
Dの意志としても、ここ数年で「製薬 × AI x デジタル」は確実にキャリアとしての旨味が増している領域だと感じています。
この記事では、McKinsey・BCGレポートをベースに、
“外資製薬におけるAIキャリアのリアルとこれから”をわかりやすくまとめます。
市場/業界規模とマクロトレンド

外資製薬って、AIでどれくらい変わろうとしているんでしょうか?

結論、業界として“変わらざるを得ない”ほどの大きな波が来ています
製薬業界では今、AI/デジタルが“次の成長ドライバー”として本格的に立ち上がりつつあります
McKinseyやBCGといった主要コンサルティングファームも、
「AIが生み出す経済価値は非常に大きい一方、企業はまだ十分に活かしきれていない」
と共通して指摘しています。
具体的に何が起きているのか?
① McKinsey:100社中ほとんどがAIを試しているが、成果は伸びていない
McKinseyの“Early adoption of generative AI in commercial life sciences”レポートでは、
- 製薬・メドテック企業100社の多くがGen AIのパイロットを実施
- しかし、多くが「テスト止まり」で、全社展開(スケール)に至っていない
つまり、
“やってみたけど、組織として使いこなせていない”
というのが現状です。
② BCG:AI市場はCAGR85%、2027年に今の20倍超
BCGの“For Pharmaceutical Companies, Three Steps to Value with Generative AI”レポートでは、製薬を含むAI市場について
- 年平均成長率(CAGR)85%
- 2027年には“今の20倍以上”の規模に拡大
としています。
企業側から見ると、
「今すぐAIを実装できる体制をつくらないと競争力が落ちる」
という危機感が強まっています。
③ McKinsey:スケール化には「3つの基盤」が必須
もう一つのMcKinseyレポート“Rewired pharma companies will win in the digital age”では、
AIのスケールアップに必要な要素として次の3つを挙げています。
- データ基盤(DataOps)
AIが使える状態にデータを整える仕組み - モデル運用(MLOps)
作ったAIモデルを安全・効率的に運用する仕組み - プロダクト型オペレーティングモデル
“作って終わり”ではなく、継続的に改善し続けるチーム体制
これらが揃わないと、
せっかくAIを導入しても全社的に成果が出ない
と繰り返し指摘されています。
つまり、AIの価値は大きいのに、活かせる人が少ない。
だからこそ“AIを実行できる人材”の価値は今、急激に上がっています。
人材・キャリア視点:どんなスキル・職務が必要なのか?

AIキャリアに興味がありますが…
製薬でどんなスキルが求められるんでしょう?

ポイントは、“AIだけ”でも“製薬だけ”でもなく、その橋渡しができる人材です。
外資製薬で求められているのは、
“AIだけ分かる人”でも“製薬だけ分かる人”でもなく、
その両方をつなげられるハイブリッド人材です。
McKinsey・BCGともに、「AIで価値を生むには“人材スキルの変革”が必須」と述べています
1. 外資製薬で今求められる人材像は?
キーワードは「製薬ドメイン × データ・AI × プロダクト思考」
AIを“実際の業務”に落とし込むには、製薬の現場を理解しながらデータを扱い、
必要なプロダクトをつくって改善できる人材が必要です。
具体的に新しく生まれている主な職種は以下のとおりです
AI/データ専門職
データそのものを扱うテック寄りの職種です
- データサイエンティスト(R&D/臨床/Commercial)
- 機械学習エンジニア・MLOps
- バイオ/ケミインフォマティクス
“ハイブリッド型”ロール
ビジネス(Medical・Commercial)とAIをつなぐ役割です
- Medical/CommercialのAI Enhanced担当
- Product Owner / Product Manager(AIプロダクト担当)
- AI Translator(ビジネスとデータの橋渡し)
横断的にAI活用を進めるロール
社内横断的にAIの活用を推進・サポートする役割です
- AI Center of Excellence(CoE)
- データガバナンス/AI倫理
2. 共通して求められるスキルは?
どのロールも、次のスキルが土台になります
製薬の理解:治療領域、製薬バリューチェーンの基礎
データ・AIのリテラシー:統計、RWD(リアルワールドデータ)
プロダクト思考・アジャイル:“作って終わり”でなく、継続的に改善する発想
変革推進力:業務フローを再デザインした経験
グローバルコミュニケーション:海外チームとの連携、英語での調整力
まとめますと、「製薬の文脈を理解しつつ、AIを実務に落とせる人」
このタイプの人材が、これから10年で最も評価されるポジションです。
AIの専門家だけでも足りない
製薬だけでも足りない
その“橋渡し”ができる人こそ、外資製薬で価値が急上昇していきます
外資製薬でAIキャリアを築くためのチェックリスト

結局、私が今からAIキャリアを目指すなら何を磨けばいいですか?

大事なのは“どの部門で・どの役割で・何のスキルで価値を出せるか”を明確にすることです
AIキャリア戦略の軸は、主に次の4カテゴリーで整理できます。

1. ドメイン知識 × ビジネス理解
「製薬の専門知識」だけでも不十分
「ビジネスの理解」だけでも不十分
両方を“橋渡し”しながら価値を出せる状態を指します。
特に外資製薬 × AI領域では、
「バリューチェーン(R&D → 承認 → 市販後 → Commercial)全体がどう動き、どんなKPIで回っているか」 を理解し、そのうえで「ビジネスインパクトを説明できること」が重要です
例えば営業 / マーケ(Commercial)においては以下のように、
「HCPの処方パターンを分析し、訪問すべきターゲット医師をAIで優先順位づけできます。
これによりMRあたりの生産性を10〜20%改善できます」
単に「AIが使えます」ではなく、“CommercialのKPI改善にどう効くか” を語れることが重要となります
2. データ/AIリテラシー
データ/AIリテラシーが高い人とは、統計の基礎を押さえながらRWDを正しく読み解き、非構造化データの特徴を理解し、AIプロジェクト全体の流れ(Proof of Conectp →検証 →展開)の中でビジネス価値に結びつく判断ができる人です
【具体的なケース例:処方最適化のAIプロジェクト】
① 統計・データ分析の基礎
MR活動による影響を測るために 処方件数の推移 を確認し、
- 平均値
- 中央値
- 相関係数
などの基本的な統計指標を理解しながら、どの医師層の反応が高いかを読み解く
② RWD(リアルワールドデータ)の特性を理解している
プロジェクトでは、保険請求データ(レセプト)や電子カルテ(EHR)の一部を使って医師の処方パターンを分析する必要があった。
担当者は、
- レセプトは「処置・薬剤は強いが、臨床背景は弱い」
- EHRは「記載内容の揺れがあるが患者背景は豊富」
といった特徴を理解し、どのデータで何がわかり、何は推定に留まるかを判断
③ 非構造化データ(テキスト・メモ)の意味を理解して使える
次に、MRが記載する 面談記録(Call Note) から医師の関心領域を抽出
担当者は、テキスト特有の課題(略語・誤字・表現揺れ)があることを理解し、以下を提案
「Call Noteをそのまま学習させると誤差が大きいので、キーワード辞書を先に整備しましょう」
この判断により、NLPモデルの精度が改善された。
④ AIプロジェクトの流れを理解し、実務で“橋渡し”ができる
PoC(概念実証)では、以下の点をチーム内で整理する役割を担う
- 入力するデータ(処方履歴・面談記録)
- 予測する指標(高反応医師スコア)
- 評価指標(Recall重視)
さらに、Medical・法務と調整し、「どこまでが適正使用の範囲か」 を踏まえて展開方法を決定
最終的に“高い処方反応が期待される医師リスト”がAIで生成でき、MRの訪問効率が約15%向上“
上記のように現場のニーズを解決するために、RWE/Dなどを積極的に活用し、それを実施・展開するために社内横断的に調整ができるポジションもニーズが高まります
3. プロダクト思考・変革推進力
3つ目のAIキャリア軸のプロダクト思考・変革推進力では「作って終わり」ではなく、現場に“使われ続ける”状態まで持っていける能力を持つことです
具体的には以下のような行動ができることです
① 課題設定(現場起点)
Commercial部門から「MRの活動データが分散していて、次の一手が属人的になっている」という課題をヒアリング
- 営業KPI:訪問効率、処方カバレッジ
- ビジネス上のゴール:売上最大化ではなく“再現性のある営業判断”
技術ありきではなく、KPI起点でテーマを定義
② PoC設計(小さく・早く)
データサイエンスチームと連携し、
- 過去のMR活動ログ+処方データを使い
- 「次に訪問すべき医師」をレコメンドする簡易モデルを作成
PoCの成功条件を明確化:
- 精度◯%以上
- MRが「次の行動が決めやすい」と感じるか
評価軸を“モデル精度”だけにせずに、現場の定性的な意見も取り入れることが重要
③ クロスファンクショナルな橋渡し
PoCレビュー時に発生したズレ:
- データ側:「精度は高い」
- 営業側:「現場の感覚と合わない」
そこで、
- MR同行・ヒアリングで業務フローを再整理
- UI・アウトプット形式を営業視点に修正
- ITと連携し、既存CRMに組み込める形に調整
データ・IT・現場の“翻訳役”として機能
④ 本番展開(運用を見据える)
本番前に実施:
- MLOpsを意識したデータ更新フロー設計
- MR向けトレーニング資料・FAQ作成
- KPIモニタリング設計(使われているか/成果が出ているか)
結果:
- MRの訪問効率が改善
- ツール利用率が定着
- 他ブランド・他国展開の検討へ
→ PoCを「プロジェクト」で終わらせず「プロダクト」に昇華
まとめるとプロダクト思考・変革推進力とは、PoCを“現場で回り続ける仕組み”まで持っていく力。そのために、部門間の言語を翻訳し続ける役割を担えるかが鍵
4. 組織/オペレーティングモデルの理解
① 組織モデルの理解(CoE × 現場)
本社に AI/Data CoE(Center of Excellence) があり、
- CoE:共通基盤、データ標準、モデル方針を策定
- 各国・各事業部:ユースケース定義、業務実装を担当
という役割分担を理解したうえでプロジェクトに参画。
→ 「誰が決め、誰が使い、誰が運用するか」を把握している
② DataOps/MLOpsを意識した設計
PoC段階から以下を意識:
- データ更新頻度・品質チェック(DataOps)
- モデル再学習・バージョン管理(MLOps)
- KPIダッシュボードでの継続モニタリング
「一度作ったら終わり」ではなく、
運用前提で設計・議論できる
AIを“プロジェクト”ではなく“業務インフラ”として扱える
③ グローバル連携での実装推進
US本社CoEと週次ミーティングを実施。
- 日本市場特有の業務フロー・規制を説明
- グローバル標準とのギャップを整理
- 本社側の設計思想をローカルに翻訳
ローカルとグローバルの間で摩擦を減らす役割
④ 英語での実務コミュニケーション
単なる英会話ではなく、以下を英語で実施
1)要件定義の説明
2)懸念点・リスクの言語化
3)合意形成のための論点整理
意思決定に影響を与えるコミュニケーションを英語でリードします
まとめると組織/オペレーティングモデルの理解とは、DataOps/MLOpsを前提に、CoEと現場、グローバルとローカルを“構造的につなぐ力”です
その接続点で英語を使い、意思決定を前に進められるかがキーとなります
おわりに:今後5〜10年の展望と“事実として”押さえるべきこと
製薬 × AI/デジタルは、確実に伸びるキャリア領域です。
AI市場はCAGR85%で爆伸び(BCG)し、McKinseyによると製薬企業はパイロットからスケール化に本気で取り組み始めているとのレポートが述べられております。
一方、“製薬 × AI × 変革”というハイブリッド人材はまだ少なく、希少価値が高いです。
AIキャリアを外資製薬で築きたいなら、
「どの部門で・どんなロールで・どう価値を出すか」を明確にすることが成功の近道です
Dの意志としては、今まさにこの領域は「次の5〜10年で最も伸びるキャリア機会」だと考えています
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